「はい、到着」
「はー…」
首がほぼ真後ろに倒れるような状態で目の前の建物を見つめる。
「遠くから見ても大きいと思ったけど、近くで見ると更に大きいんだね」
「そうだね、お城だからね」
「女王様に会えってウサちゃんは言ってたけど、王様じゃなくていいの?」
「国を統べるのは女王様だからね。ほら、一番偉い人だから」
「女の人が一番偉いの?」
「女の人、じゃなくて『女王様』が偉いんだよ」
「ふーん???」
わかるようなわからないような。
「それじゃあ、僕の役目はここで終わり。気をつけてね、」
「え!?」
てっきり女王様のところまで一緒に行ってくれると思ったのに、彼はひらひらと手を振っている。
「チェシャ猫さんは行かないの?」
「残念ながら女王様は猫が嫌いなんだ。僕が近づくとくしゃみが止まらないらしいよ」
「猫アレルギー…なんだ」
「あー、そうそう、確かそういう病名だったかな」
「そっか…だったら、ひとりで行く、ね」
今までウサちゃんといたり、チェシャ猫さんといたから、ひとりになると少し寂しい。
ううん、少しどころじゃなく、物凄く…寂しい。
――― どこか、心の中にぽっかり穴が開いてるみたい…
それが表情に出ていたのか、チェシャ猫さんが優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫、またすぐに会えるよ」
「本当?」
「うん。それに…これから女王様に会って、役割を貰えば、君もここで生活できる。そうすれば、いつでも僕に会えるよ」
「そっか!わかった」
大きく頷いて、チェシャ猫さんを心配させないよう、笑顔を作る。
「じゃあ、行って来る。またね!」
「うん、またね、」
「ここまで一緒に来てくれて、どうもありがとー」
ぶんぶんとチェシャ猫さんに手を振りながら、お城へ向かって歩き出そうとすると、チェシャ猫さんに呼び止められた。
「ー」
「何?」
「前を向いて歩かないと、また、転んじゃうよー」
「……失礼な、そんなに何度…もっ!!」
言われたそばから、足元の段差に足を取られ…躓きかけた。
「だーから言ったのに」
「……えっと、はい。気をつけます」
「お城の中では転ばないよう、ちゃんと足元見て歩くんだよー」
どこか保護者のような台詞に苦笑いしつつも、両手で大きく○を作ってから、その言葉に応えるようしっかり前を見て歩き出した。
う〜…女王様って、どんな人なんだろう。
Are you Alice? - blot. #07
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